協働ロボットの特徴
協働ロボットとは、人間と一緒に作業できるように設計されたロボットです。現在販売されている協働ロボットの多くは、6軸アームタイプです。協働ロボットは、力や速度を高速で制御しつつ、衝突時に瞬時に反応するセンサーや人間が挟まれにくいデザインを実装したロボットアームになっています。
ユーザーやシステムインテグレーターは、リスクアセスメントを実施することで、安全柵がなくても使用することができるようになります。
通常の産業用ロボットと比べて、小さくて軽いので、設置場所に余裕が生まれます。また、タッチパネルやダイレクトティーチング機能を備えたロボットが多く、直感的に操作でき、ロボットの操作の経験がなくても導入しやすいことが特徴です。詳しくは、ISOの規格をご参照ください。(ISO:10218-1,10218-2,ISO/TS15066)
板金加工工程で協働ロボットを使うと、どのようなメリットがあるかご紹介します。ひとつは、コンパクトなロボットを簡単にプログラムできることです。少量多品種の板金加工に対するロボット導入の障壁は、教示(ティーチング)時間が長いことでした。協働ロボットでは、ダイレクトティーチング機能やタッチパネル操作など、従来のロボットよりも使いやすさが向上しています。
もうひとつは、反復精度と直進性が優れていることです。一定の高さを保ちながら真っ直ぐに動作することで、溶接、バリ取り、研磨等において、高品質で安定した生産を可能にしてくれます。人の手では真っ直ぐに動かしているつもりでも、微妙な揺れが生じます。結果として、溶接ビードやバリ取り、研磨のムラにつながります。ただし、軌跡精度を保証しているロボットメーカーはないので、注意が必要です。
様々な協働ロボットのタイプとヒューマノイド
6軸アーム形:このタイプのロボットは市場に最も多く、板金加工を行っている方であれば、誰もがイメージするタイプです。可動部分が6か所あって、人間の腕に似ているロボットです。関節に相当するモーター部分には、ショルダー(肩)、エルボー(肘)、リスト(手首)というように腕の部位の名前がついています。成人男性の腕の長さが850㎜前後と言われており、アーム長さが850㎜の協働ロボットが多いのもこの理由です。同じ可搬重量のロボットでも、メーカーによってデザインは違います。ロボットメーカーの設計思想が反映されるところで、主な差異として、ロボットと作業者が挟まらないようにするアームの形状や、リストのジョイントの数や動作の範囲などが挙げられます。下記図ではリストが3軸と2軸のロボットの違いと設置例を示しています。ロボットはテーブルや床に設置するだけでなく、壁や天井に吊るして動かすこともできます。作業内容や設置環境に合わせて、最適なロボットを選んでください。
リスト軸数の違い
・リスト3軸
出典:ファブエース CTWカタログ
・リスト2軸
設置場所
天吊り・壁・水平
出典:ユニバーサルロボット UR20
双腕ロボット:人間の胴体と同じように、2本のアームと頭部を持ったロボットです。構造や制御は難しくなりますが、人間と同じように両手を使った作業ができます。立体的な作業をするときに役立ちます。例えば、仕分け、箱詰め、組立などです。人の目の代わりにロボットにカメラを付けているものもあります。
カワタロボティックス
NEXTAGE
ABB
YuMi
自立移動式ロボット(Autonomous Mobile Robot):自律的に移動が可能な台車にアームやカメラなどを取り付けたロボットシステムです。AMRは、人間の操作を必要とせず、周囲の環境を認識して自己走行できるロボットのことです。ロボットの設置場所を開放することで、ロボットの移動領域や作業姿勢を多様化することができます。板金加工工程では、自動折り曲げロボットの素材の入れ替えや製品の取り出しに役立ちます。
出典:ユニバーサルロボット
– ヒューマノイド:人間に似た形状や動きをするロボットのことを指します。ヒューマノイドは、人間と同じように二足歩行ができるものや、人間の腕や手の動きを模倣できるものなどがあります。映像でご覧になられた方も多いと思います。ヒューマノイドは、人間との協働や、人間が居住する環境での作業などに適していると言われます。アニメの世界のようですが、現実的なものとして進化しています。
出典:Boston Dynamics アトラス
まとめ
・ 6軸アーム形の協働ロボットは、コンパクトで操作性がよく、はじめてのロボットとして導入しやすいメリットがあります。特に板金加工のおいては、ロボットの高い直進性を活用することで、手作業に代わる高品質で安定した加工装置になります。
・ 2本のロボットアームが同期する双腕形やロボットとAMRがセットになった移動型、人間と同じ動作をするヒューマノイドは、これからの板金加工の自動化を加速させるロボットとして期待されています。進化のスピードが速いので、実用化される日も近いと思われます。