板金加工のバリ取りを解説

板金加工のバリ取りとは

バリとは、金属などを加工する途中で意図せず発生してしまう、不要な突起のことをいいます。「かえり」とよぶこともあります。
製品にバリが残っていた場合、次のようなトラブルが起こる可能性があります。

触れたときにケガをしたり、周辺部品を傷つけたりする

バリは多くの場合、鋭利な形状をしているため、触れるとケガをする恐れがあります。また周辺にケーブルが通っていると、バリの残った箇所と繰返し擦れることで外側の被覆が破損し、ショートにつながる危険性もあります。

使用中に脱落し不具合をまねく

バリは多くの場合、製品にしっかりと付いていないため、使用中に取れてしまうことがあります。清浄度が求められたり、電子回路を含む製品では、取れたバリが汚染物質となったり、回路上に落ちてショートにつながったりします。

寸法精度が悪化する

バリは突起として残るため、精度の低下を引き起こします。バリを挟んで計測した場合は計測値の誤差が大きくなりますし、次工程での基準面にバリが残っていた場合は、加工精度が低下します。

バリはさまざまな加工法で発生しますが、板金加工においても、特にせん断を伴う加工で発生します。上のイラストは、板材をパンチで打ち抜く加工の断面模式図です。

パンチが材料に接触して押し込まれると、それによってだれが発生します。その後、せん断面という比較的平滑な面を作りながら分離が進みます。そしてあるポイントで材料自体の延びの限界を超えるため、破断面という比較的粗い面が作られながら、さらに分離が進みます。パンチが板厚近くまで押し込まれると分離が完了しますが、この際、材料の延性によって板厚よりもさらに下側に材料が引っ張られます。これによってできた突起が、バリです。

板金加工におけるバリは、加工条件を最適化することで減らすことはできますが、原理上完全になくすことはできません。このため、ほとんどの場合でバリ取りが必要になります。

なお、近年では薄板を使った小ロットの製品製造に、レーザー加工機を使用することが多くあります。この場合、レーザーを局所的に照射し熱で材料を溶かして分離するため、バリは発生せず、とても綺麗な直角が得られます。ただし、レーザーではバリではなくドロスというものが発生します。
※ドロスとは、レーザー加工時において発生する、ワークの加工部裏面に付着する玉状や氷柱状の溶解金属のことです。

しかし、あまりに角部が鋭利に仕上がるため、バリと同じようにケガの危険性などが問題になることがあります。この場合も、バリ取りと同様の作業を行って面取りを行います。(最近は、加工図面にR面やC面処理を指示されていることが多いです)

手作業でバリ取りを行う方法

バリ取りを行う方法は複数ありますが、今回は手作業で行う方法を見てみましょう。

やすり掛け

鉄工やすりやサンドペーパーなどを使用してバリを落とします。やすりは代表的な平形をはじめ、丸形、半円型などさまざまな形状のものがあり、場所にあわせて選択します。粗さも複数あり、バリの大きさや材料の種類などにあわせて選択します。

ワイヤーブラシ、バリ取りブラシ

鋼やステンレスなどの素材によるワイヤーブラシは、比較的軽微なバリを除去するのに有効です。同様の素材を使った、バリ取りブラシとよばれる電動工具用アタッチメントもあり、ハンドグラインダーや卓上ボール盤に取り付けて使用します。

スクレーパー

小さな刃の付いた工具で、刃を角に当てて走らせることで、バリを除去します。通常のブレード形状のものや、輪郭を柔軟に倣えるように刃が回転するものなど、用途に合わせてさまざまな種類が用意されています。


出典:株式会社 福島鑢商店 シャビーブ

ベルトサンダー

ベルト状にしたサンドペーパーを空圧や電動で回転させる工具で、それを角に当ててバリを除去します。空圧で駆動するハンディタイプのものが広く使われています。


出典:日東工器 株式会社 ベルトン

ロータリーバー

超硬合金などでできた回転やすりで、リューターやグラインダーに取り付けて使用します。円柱状やたけのこ状など、さまざまな形状や粗さが用意されており、バリ取り箇所や材料の種類に応じて選択します。


出典:ユニオンツール

エンドレス

バリ取りを手作業で行う場合、基本的には角部をすべて倣って除去する必要があるため、手間と時間がかかります。大量生産品の場合、ショットブラストやバレル研磨などの方法が使われることが多いですが、小物でなければ難しい、バリが取りきれるまでに時間がかかる、ワーク全体に傷がつく、などの制約もあります。こうした制約に対応できる、バリ取り専用機も製作されています。


出典:HiKOKI

ディスクグラインダー

ディスクグラインダーは、回転する砥石のディスクを持った電動工具です。金属や非金属の研磨・研削・サビ落とし・鏡面仕上げを行うために使用されます。用途に合わせて砥石部分を付け変えることで適切な加工が可能となります。通称、グラインダーとも呼ばれます。


出典:HiKOKI

以上、バリ取りに関する基礎知識と、手作業でバリ取りを行う場合の具体的な手法についてご紹介しました。