ノギス(Vernier Caliper)は、材料や部品の寸法計測に用いられる計測器具の中でも最も代表的なものの一つです。シンプルな形状ながら、板厚、円筒の内外径、深さ、段高さなどを精度よく計測することができ、様々な種類、サイズのものが使われます。今回はこのノギスについてご紹介します。
定規は平面上の距離を測る用途などには向いていますが、三次元的な物体を計測する際にはその端面を正確に合わせることが難しく、精度も一般的には0.5mm程度が限界です。ノギスは定規に計測対象を挟み込む機構を組み合わせたものといえ、対象となる面間の距離を正確に測ることができます。また多くの場合は副尺(バーニヤ目盛)などの、定規よりも高い分解能で計測することができる仕組みを備えています。
ノギスの構造は下図のとおりです。スライド部は長手方向に移動ができ、これは指掛けに親指を添えて動かします。オレンジ色で示した箇所は全て同じ距離になっています。
次に測定に用いる箇所について見てみます。
ジョー
スライド部を縮める方向に動かし、赤い線の箇所で測定対象を挟んで計測を行います。板の幅や厚み、円柱の外径などを測る、最もよく使う箇所です。
クチバシ
スライド部を広げる方向に動かし、赤い線の箇所で測定対象を挟んで計測を行います。溝幅や円筒の内径などを測る箇所です。
デプスバー
スライド部を広げると本尺から繰り出る細い棒状のものです。本尺の後端とデプスバーの先端との間の距離を目盛から読むことができるため、穴の深さなどを計測することができます。デプスバーの先端が少しえぐれていますが、これは穴底の角Rなどに乗り上げないようにする工夫です。
スライド部
ノギスを裏から見ると、本尺の前端とスライド部の前端の間の距離も目盛から正確に読むことができることがわかります。これを用いることで段のついたフランジ部の幅などを計測することができます。
ノギスの特徴は副尺(バーニヤ目盛)によって、定規よりも高い分解能で計測できることにあります。実際に目盛の読み方を見ていきます。
下図は13.55mmの幅をもったブロックを計測している場合の状態になります。最初に副尺の0目盛が本尺のどこの箇所にくるかを確認します。この場合13と14の間にあり、整数部が13であると読み取れます。続いて小数部を読みますが、この際は副尺の目盛と本尺の目盛が一直線に重なる箇所の、副尺の数値を見ます。下図では5.5の箇所がきれいに一直線となっていることがわかります。この10分の1の数字が小数部の数字となります。つまり先に読み取った整数部と合わせて、13.55mmがブロックの幅であると計測できます。
これまで解説してきたものはアナログ式とよばれる種類のノギスです。こちらは構造がシンプルである一方で細かな目盛を目視で読む必要があり、見間違いによる計測ミスなどが起きがちです。これを改善したものとして、デジタル式やダイアル式などがあり、特に前者は近年一般化しています。分解能についてもアナログ式に比べて優れていることが多いです。
ノギスは様々な箇所の計測に使え、慣れれば簡単に使うこともできる便利な計測器具です。しかし正しい計測には次のような注意点もあります。
- 測定面に対して、ノギスの測定部が垂直にくるようにする
傾いた状態で計測物を挟むと、実際の値からずれてしまいます。 - 測定時に力をかけすぎない
測定物が軟らかい場合など、計測物を歪めることにつながり、実際の値からずれてしまいます。 - 目盛に対して垂直な位置から読む
視差による誤差を防ぐため、目盛に対して対向して読みます。 - 測定部に異物などなく、きれいな状態にする
これまで一般的なノギスについて見てきましたが、計測対象に合わせて特殊なノギスも用意されています。その一例として、ピッチノギスを見てみましょう。
ピッチノギスは、板材に空けられた穴の位置などを正確に計測するノギスです。下図のような部品の穴位置を正確に求めたい場合、穴の中心は実体がない点のため通常のノギスで計測することは困難です。ピッチノギスはジョーが円錐状になっており、これを穴に挿し込んで側面部を当てることで、穴の中心を間接的に基準とすることができます。ピッチノギスには通常のジョーと円錐ジョーが組み合わせたものや両方とも円錐ジョーのものなどがあります。それぞれ部品の平らな側面から穴位置を求める場合と穴同士の距離を求める場合に用いられます。
ノギスの概要や使い方、使用上の注意点などを見てきました。ノギスは最も一般的な計測器具ながら、様々な箇所に応用のできるとても便利なものです。種類も豊富ですので、用途に合わせて選択してみてください。